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松本徹三(Tetsuzo MaTsumoto)-閑話休題-1 「朱蒙」の話

閑話休題-1 「朱蒙」の話

私のブログは、毎回かなり重いテーマを長文で論じているのですが、これでは息が詰まるので、今後は重いテーマの合間に、「情報通信の将来像」とは関係のない、短い随筆風のものも、随時挟ませて頂こうと思っています。(これは、ブログというものの性格について一家言を持っておられるある方の助言でもありました。)今回はその最初の試みです。

私は実は現在のCS放送の最初の仕掛け人であり、そのずっと後になってデジタルBS放送が始まる時には、或る民放のトップの委託を受けて、新しいビジネスモデルの提言をさせて頂いたこともあります。にもかかわらず、実は最近になるまでデジタルBS放送を受信出来る受像機を持っておらず、最近なってやっと新しい受像機に買い換えた次第。ところがBS放送を見始めると、我々のような年代の人間にとっては、BSの番組の方が、全視聴者の最大公約数をひたすら追求しているこれまでの地上波放送の番組より、はるかに合っている事がわかりました。

面白いのは、主として旅番組と海外で作成された番組ですが、私にとっては、特に興味深いのは韓国の歴史ドラマです。中でも、フジTVが水曜日にやっている「朱蒙」には、すっかりハマってしまいました。日本の歴史ドラマは、同じテーマを扱ったものをこれまで何十回も見せられていますし、中国のものも、「項羽と劉邦」とか、筋としては既に知っているものが多いので、見ていてあまり緊張感がありません。ところが韓国の歴史ということになると、たいていの日本人は殆ど何も知らず、私も例外ではないので、全ての筋書きがとても新鮮なのです。

「朱蒙」は、「高句麗」の創始者の青年時代を描いた大河ドラマで、韓国では驚異的な視聴率を記録した大ロングセラーだったのですが、「成る程、これならヒットしたはずだ」と頷けるだけの、随所に工夫を凝らした見事な作り込みです。「権力闘争」というものの本質や、それに関連する種々の「駆け引き」、そのベースにある「腹のくくり方」といったことも、登場人物の口を借りて、現代にもつながる深さをもって語られています。欲を言えば、戦闘シーンや群集が集まるシーンには、実際に動員した人数の5-6倍ぐらいを動員し、これにCGを組み合わせていれば、もっと現実的な迫力のある映像が作れたでしょうが、TVドラマですから、そこまでは無理だったのでしょう。

これは、中国の歴史では「漢」の時代の物語ですから、日本の歴史で言うと、卑弥呼、或いはそれ以前の時代、つまり「古事記」や「日本書紀」に描かれていた時代のことです。(この物語の中頃に出てきた日蝕も、おそらくは、日本の「天の岩戸」伝説のベースになったに違いない日蝕と、同じものだったのではないかと思われます。)そういうことを考えていくと、更に興味が増します。やはり古代の日本は、中国との距離が離れていた分だけ、文化的には少し遅れていたようです。

それから、これは「朱蒙」の話だけに限らないことですが、韓国の人達にとっては、歴史上のどんな時点でも、常に中国人との(或いは中国に侵入したり追い返されたりしてきた北方の騎馬民族との)緊張関係が絶えなかったことが、如実に見て取れます。異民族との間での支配、被支配の関係は、「城は焼け落ち、殿様やその周辺は切腹しても、庶民の生活はあまり変わらない」という単一民族の日本の状況とは比較にならないほどに厳しいものであったに違いなく、こういう環境を凌いでいくために必要な「忍従」や「駆け引き」は、普通の日本人にはなかなか理解できないレベルのものだったと思われます。

もう一つ、韓国の歴史ドラマに特有なのは、「商団」というものが重要な役割を演じていることです。「商団」は、或る程度の武力を持ち、あらゆるところに出かけて行って、その地の権力者と交渉して取引をまとめ、巨額の富を蓄えています。或る「部族」の長がそのまま「商団」の長であり、その「部族」の運命は、「商団」の運命に完全に依存しているというケースも多かったようです。勿論ドラマ故の誇張も相当あるでしょうが、この「商団」の長が随所で示す、「合理性」と「根性」に裏打ちされた幾つかの「決断」も、近江の国の「持ち下り商人」の末裔である伊藤忠商事に長年勤めていた私にとっては、大変興味のあるところでした。

「竹島(独島)問題」や「教科書問題」を持ち出すまでもなく、「日韓関係」(或いはその延長線上にある「日朝問題」)は、常に双方の感情問題が絡まった、微妙で難しい関係です。一方、経済の分野では、今や一部では日本企業を凌ぐ力を蓄えた韓国企業も出現しており、一面では手ごわい競争相手、一面では良きパートナーという関係です。日中関係や日米関係ほどのダイナミックなインパクトはなくとも、日韓関係(及び日朝関係)が日本にとって引き続き極めて重要であることは間違いありませんが、このような歴史ドラマは、我々が相手を理解する上での、幾つかの貴重なヒントを与えてくれるように思われます。

「朱蒙」は81話で完結ときいていますが、現在、日本のBS放送では63話まで来ています。先の話はCDを買えば今すぐにでも見られるのですが、折角ですから、やはり毎週水曜日を楽しみにしていこうと思っています。

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コメント(1)

hebi no sita :

歴史ドラマと史実をごっちゃにしてはいけませんよ。
あと、韓国の歴史教科書をご覧いたたくことをお勧めします。
一時期流行ったif戦記のようで面白いですから。

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このブログ記事について

このページは、TetsuzoMatsumotoが2008年7月17日 14:01に書いたブログ記事です。

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松本徹三のプロフィール

松本徹三
1962年 伊藤忠商事株式会社入社
1984年 伊藤忠アメリカ会社上級副社長兼エレクトロニクス部長就任
伊藤忠商事(株)東京本社通信事業部長、同マルチメディア事業部長歴任
1996年 同社退職、ジャパン・リンク設立
1998年 クアルコムジャパン(株)代表取締役社長就任
2005年 同社取締役会長、クアルコム米国本社上級副社長就任
2006年 ボーダフォン(株)(現ソフトバンクモバイル)執行役副社長 技術統括兼CSO就任